
本書『奇跡を求めて』は、一九二四年一月にグルジェフとの絶縁を宣言した後のP・D・ウスペンスキーがグルジェフとの過去の関係を振り返って執筆したものだが、彼はこれを公表せず、出版されたのは彼の死後である。主として一九一五年から一九一八年にかけてグルジェフがロシアで説いた宇宙と人間をめぐる体系的な教えの多岐にわたる膨大な内容を克明に再現している。そこに引用された言葉の正確さはのちにグルジェフ自身によって確認されている。 たいへんな価値がある記録でありながら、本書は多大な誤解の原因ともなってきた。その背景として、本書の原稿はほぼ間違いなく、一九二四年七月の自動車事故の後、グルジェフが早々に消え去ることを予期し、その後の時代に自分が代わって権威を獲得すべく、自分とグルジェフのかつての関係を物語るとともに、グルジェフと縁を切った自分の立場を正当化し、自分の解釈に基づく「システム」の優越性を訴えるべく書かれたものである。『奇跡を求めて』に収められたウスペンスキーの説明や主張には、その正当性が疑われるものが少なからずある。 ウスペンスキーについて関係者への聞き取りやロシア語文献の調査を含めた本格的&#